機能 TOP 10: 統合モデリング環境でのデジタル板金設計 - パート2

今回のパート2では、やはり同様の項目に注目しますが、統合されたモデリング環境における板金部品の詳細設計のための機能をご紹介します。

 

この記事のパート1 で、ThinkDesign の曲げ加工を用いた板金部品の設計に使用する機能をご紹介しました。パート1でご紹介したような一連の機能を用いると、製品の設計と生産に必要な情報をすべて自動的に得ることができるため、その製品をすぐに生産することができます。
今回のパート2では、やはり同様の項目に注目しますが、統合されたモデリング環境における板金部品の詳細設計のための機能をご紹介します。
実際に部品を生産する場合には、特に折り曲げ線の端点が相互に近接する場合など、部品を折り曲げるときに発生する応力により形状が歪んだり、部品が壊れたりすることがあります。このような問題を避けるため、そしてより簡単に形状を折り曲げることができるように、板金部品に対しては「逃し」の作成が自動的に行われます。この様子は、フランジをエッジの一部のみに作成した場合によくわかります。

ThinkDesign の板金機能は、形状に対して適切なパラメーターを条件に応じて自動的に選択し、異なったタイプのリップを必要な場所に追加します。この機能のメリットは、形状に対して最も適したタイプと大きさの逃しが適切な場所に自動的に追加されることです。また、逃しのタイプは、「逃し(折り曲げ)」ドロップダウンリストより、長方形または長円を選択することができます。
二つのフランジの面が直角になるフランジを追加する場合、逃しを制御する便利なオプションを利用することができます。このオプションは「フランジの角」パラメーターから選択することができ、フランジ作成時に生成される逃しのタイプと振る舞いを決定するものです。また ThinkDesign は、曲げ半径と展開操作から使用可能な逃しの下限値を計算し、設計者の入力がそれを下回っていた場合、その下限値を表示します。

単純な板にフランジを順次追加していくのではなく、作成済みのソリッドからスタートしても同様の結果を得ることができます。この場合、はじめに部品の外形形状を定義し、次に形状を展開するために切り開かなければならない場所を指定します。
例:

次の図のように、「シェル」コマンドを使用して肉厚一定(板金部品の板厚)で形状の内側をくり抜き、不要な面を削除します。

そしてスケッチリップコマンドを使用して2点を選択し、必要に応じて隙間の値(例: 0.1 mm)を設定します。続いてエッジリップコマンドで残りのエッジを切り開きます。

 

「展開」と「再折り曲げ」コマンドを実行すると板金パラメーターで設定されている値に従って折り曲げ部が追加されます。そして「角を閉じる」コマンドでフランジの一部を延長して面間の隙間を減らす(閉じる)ことができます。次の例では、「角を閉じる」コマンドで「真中」オプションを使用し、もう片方のフランジの中間まで形状を延長し、溶接する余地を少し残した状態を示しています。

 

ThinkDesign は形状を切断するための CAM アプリケーションに対して出力する形状を簡略化することができます。この場合、フラットパターン投影図の「逃しを削除する」オプションを有効にします。
また、内部に多くの部品を含む板金の筐体を設計するときに、一つの板金部品だけで筐体全体を作成することができず、複数の板金部品で構成することがよくあります。このような場合は通常、各部品をそれぞれ別々に作成し、後から組み合わせていきます。

しかし「板金ウィザード」を使用すると、必要な形状を得るための折り曲げや切り欠きのようなルールを簡単に定義することができます。また、切り欠いた部分に従い、自動的に必要な部品を生成することができます。生成された各部品には適切な厚みが設定され、角には必要な折り曲げが設定されます。
 

このような方法は、全体形状のパラメーター化が簡単になり、各部品を個別にアセンブリする必要も無いため、形状が複雑な場合などに特に役に立ちます。
設計した各部品には、さらに詳細な形状を追加していくことができます。
ThinkDesign は、一般的な機械加工によって作成する板金形状をスマートオブジェクトライブラリとして装備しています。このライブラリを利用して、パンチ加工や機械加工を繰り返して作成するような、クリップ、ハトメ、スロット、通気孔、ねじ穴などを作成することができます。

フラットパターン投影図では、スマートオブジェクトで追加した形状は、他の部分と区別しやすいよう、特別な表示で示されます。形状に折り曲げ部とスマートオブジェクトの両方がある場合、フラットパターン投影図では、折り曲げ部分のみが展開され、スマートオブジェクトは、展開された平面上にその位置と形状が表示されます。

スマートオブジェクトを使用すれば、形状を追加する過程のすべてまたは一部を、再利用したり、別のコンピューターで使用したり、他の人と共有したりすることが可能です。
このトピックはまた別の機会に深く触れることにしますが、ここではこの文脈で説明するのにふさわしい項目を1つご紹介します。それは、スマートオブジェクトは、そのスマートオブジェクトを適用する板金部品の板厚を継承することができ、スマートオブジェクト内のフィーチャーで、その値を利用することができる、という点です。これは、変数 _SM_THICKNESS を設計中のスマートオブジェクトで使用することによって可能になります。
さらにもうひとつ、STEP ファイルからインポートした形状に直接「展開」と「再折り曲げ」を適用することができるのも、とても役に立つ機能です。インポートされた静的な形状は、折り曲げで作成した板金部品を展開するのと同じ規則を適用して展開することができます。ただしインポートした形状を展開するためには次のような前提があります:

  • 形状は一定板厚であること。
  • 展開する部分を切り欠いてあること。

ThinkDesign は、折り曲げ板金部品の設計や展開に対して、直感的なインターフェースと数多くの機能を提供しています。

また ThinkDesign では、板金部品の設計に対して特別な3次元モデリング環境は必要でなく、通常のソリッドモデリング環境で行います。このことによって ThinkDesign 上では、迅速に、そして効率的に板金部品の設計を進めていくことができます。